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 私には幼い頃から結婚を約束されている許嫁がいた。そんな私に、本格的に結婚の話が出たのは大学を卒業してすぐのことだった。


 どうしても断りたかった私は、相手がいるなら断っても良いと言われ、咄嗟に浮かんだのが彼しかいなかった。



 一ヶ月でいいから

 仮の夫婦になってほしい。



 一ヶ月で結婚生活を終えたとなれば、両親も私には結婚が向いていないとわかってくれるはず。


 そう思った私は、30日間だけの仮の夫婦になって欲しいとお願いをした。



 お礼にお金はたくさん出す、そんな勝手なお願いに、彼は嫌々ながら頷いてくれたのだ。


 ただ籍を入れるだけで、三百万という謝礼が出るなら、彼にとってもそんなに悪い話ではなかったのだと思う。


 毎日必ず家に帰ってくる。それを一ヶ月、しっかり守ってくれさえすれば、最後の日に離婚届と共に謝礼を渡す。


 これが私たちが一緒に住んでいる理由。




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