第16話

「ねー、君。手伝おっか?」


 珍しくタイミングのあったエレベーター前。


 達樹はアルバイト中。手には各部署に配達する封書の束。両手で抱えて、姿勢は少々反りぎみ。


 勝は身軽に、モバイルひとつ。


「ありがとうこざいます。でも大丈夫ですよ。最初に配達する部署で、大分身軽になりますから」


「ふぅん。真面目さんだねぇ、和臣の女の子は」


「普通ですよ」


 達樹はクスクス笑う。


「小野寺さんは、小澤さんに会いに?」


「うん、そう。俺も真面目に仕事」


 開く扉。他に利用者はなし。


 何階?と仕草で訊ねた勝に、


「8階です。助かります」


 律儀に頭を下げた。勝は8、の後に15のボタンを押す。小さなマナーに、流石だなぁと感心する。

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