第29話

(和臣視点) 


 俺のキスを受け止める達樹。必死に俺にしがみついてくるくせに、油断すればすぐに腕をすり抜けていこうとする茶色い子猫。


 この子を俺に繋げる鎖は、ないのかもしれないと不安になる。


 だが、首輪の似合わない彼女だからこそ、俺は心惹かれるのかもしれない。


 どんな場所でも、自分らしさを探そうとする少女。


 キスでも体に与える快感でも、彼女を繋いではおけない。


 地位も、金も、この子の前では意味を持たない。


 俺は必死になって、彼女を追いかけている。


 鎖ほどの束縛を求める気持ちはないが、近頃の俺は彼女との繋がりを探している。


 その方法を、考えている。



 校舎で過ごす、二人の時間。


 このまま未来まで、途切れることのない絆を、彼女に乞う。


 夕日が肌を赤く焼く。


 俺とのキスが、彼女のこの場所での思い出になれいいと願った。

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