第2話

小澤さんからのキスにちょっと躊躇ったのは、やっぱりあの記事のせい。


 天馬や小野寺さんや、木崎さんや蓮太さん。絹代さんに沙羅さんと、色んな人たちが私を気遣ってくれるものだから、


「気にしないで」とか「気にならないの?」とか、「あれとこれとは別」とか、「怒りなさいよ」とか…


 皆がそれぞれ口にする内容が重なりすぎて、キスってそんなに人生を左右するものなのかと、改めて考え始めていた。


 それなら、相手の女性にとってもそうなんだろう。



 だとしたら、私のキスが、彼にとって、私にとって、そして写真の彼女にとって“正解”かどうか、小澤さんの唇まであと5センチくらいのところで、答えを知りたい衝動に襲われていた。



 ピタ、と静止する私。


 上体を屈めて、顔を少しだけ斜めにしていた小澤さんは、訝しげに片眉をつり上げる。


「…どうした?」


 薄く唇を開いたままだった私は、はっと気づいて身を引いた。


「え、と…その。このキスで、傷つく人がいるのかなって…」


 歯切れ悪い、質問にもならない質問。


「いるだろうな」


 小澤さんは、即答した。

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