第13話

「あの新入りったら、ナンバー1のアタシの地位をまんまと奪おうってわけねっ!テンコ、許さないからっ!」


 日本のソープオペラ(昼ドラ)だか、人気のオネェだかの口調に、


「ああ、はいはい。テンマ君がナンバー1だよ~」


 気のない相槌をうつ。


 年齢不詳──おそらく22、3歳だろう。ということは年は八嶋とそう変わらない筈だ──で“なうな沖縄のお笑い芸人に何かを学びにやってきてこの地にたどりついた天馬くん”は、どこで嗅ぎつけてくるのか、人気のあるインディーズのバンドや米軍の慰安にやってきたアメリカの 大物歌手などのお忍びパーティーには必ずヘルプにやってくる。


 携帯でパシャパシャ撮影したり、無遠慮に話しかけたりすることもないから放っているが、『そのうち絶対アメリカ女の味見をする』発言などを時々口にするものだから、タツキは容赦なくみぞおちにパンチを見舞ってやる。


 『痛って~!でもスキ~!』


 …反省したこともないが。


 そんな彼の目下の敵がどうやら八嶋であるらしく、今日の天馬の働きっぷりは目を見張るものがあった。


「見て見て~!俺って働き者じゃ~ん」


「…今までいかに手を抜いていたかがよくわかる仕事ぶりで」


「たっちゃん辛口~!でも天馬負っけなーい!」


 どこまでもキャラを貫く天馬だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る