第5話

初めて彼女を抱いたのは、繁華街裏の安いラブホテル。


 彼女の戸惑いを知りながら、ただ食い尽くすように体を征服した。柔らかく甘い身体。普段は服の下に隠された腹部や内腿の白さに、理性はあっけなく焼き切れる。


  お前が、欲しい。


  俺だけを見ろ。


 陳腐な…でも確かな本音を行為の間ずっと囁いていた。


 あれは、届いたのだろうか。




 

 翌日の彼女は、目があったほんの一瞬だけ躊躇を見せた。


   気のせいかもしれない。


 その数秒後には、あっさりと、いつもと同じように俺に軽く頭を下げたから。


「おはようございます。小澤さん」


 その何もなかったかのようなよそよそしい距離感に、たまらなく苛ついた。


 

 彼女を、手に入れる。



 俺はその朝、心に誓った。

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