初日/始まりは唐突に
第1話
人生はいつだって、何が起こるか解らないものだ。
歩いていたら角から出て来た人とぶつかって、そこで別れるも、学校や職場で再会して、付き合いが生まれたりとか。
人を助けたら、その人が大金持ちで、助けてくれたお礼に、とんでもない大金をくれたりとか。
庭を弄ろうと掘っていたら、温泉やら石油が吹き出したり。
嘘みたいな事が起きたりするし、ありえない事が起こったりする。
そう、まるで読めない。
小説や漫画、映画やドラマじゃないから、先の事なんて解らない。
そう、だから、私が20代の生意気なガキを拾った事だって、解らなかった事の1つに過ぎない。
あれはまだ少し肌寒い、春先の事だったと記憶している。
仕事が終わり、一息入れようと思い、冷蔵庫を開けてみたものの、見事に空っぽで。
酒もつまみもないのは悲しい。
かと言って、居酒屋に行こうにも、真夜中という事もありやっていない。
諦めて家から歩いてちょっとしたところにある、コンビニに行く事にした。
Tシャツの上に薄手のパーカーを纏い、ポケットに財布を入れ、安いジャージのズボンを履き、踵が擦れてるスニーカーを履いて家を出た。
時間も時間だし、人の姿はまばらだ。
スーツ姿の男性やら、派手な髪色の兄ちゃんが、何処かに歩いて行くのを横目に見て、また視線を前に戻す。
少し歩くと、昼間は子連れで賑やかな、やや大きな公園が見えてくる。
私が歩いている道に出入口があり、その近くにベンチがあるんだけど、誰かがこちらに背を向けて座っているのが目に付いた。
女性と思しき後ろ姿が。
…こんな時間に、女性が1人?
不思議に思うも、下手に声を掛けるのも、なかなか勇気がいる。
それに、万が一不審な人だったら、何をされるか解らない。
歩きながら見ていたけど、視線を戻して、目的のコンビニへ向かう事に集中した。
深夜のコンビニの客は自分だけ。
静かな店内には、有線から流れてくる、流行りの音楽が聞こえてくるだけだ。
篭を持ち、店内を歩いて商品を物色。
とりあえず飲み物コーナーに行き、ビールと酎ハイの缶を一本ずつ取って篭に入れた。
食品コーナーに行き、残っている商品を見てみる。
焼き鳥があったから、それを選んだ。
こんな時間に食べるのもなんだが、今朝から何も食べてないし、腹の足しにはなるだろう。
明日はちゃんとした食事を摂らねば。
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