その壱
第1話
本を読むのは、小さい頃から好きだ。
本の世界に飛び込み、それを堪能するのが好きなのだ。
高校生になった今も、それは変わらない。
今日も今日とて、図書室の窓際近くの端の席で、1人読書に耽っていた。
誰にも邪魔されない、あたしの大切な時間だ。
電子書籍が支流となっている昨今だが、あたしはアナログな人間の為、紙媒体が好きだ。
自分の指で、1頁ずつ捲って読みたい派。
本を読んでるという、実感がわくからだ。
同じ教室の女の子達は、お化粧やファッション、彼氏やバイトにお熱なようで、休み時間はいつも楽しげに友達とお喋りしている。
あたしはそういう類いに興味がないから、本を読んで休み時間が終わるのを待つ。
恋愛とは無縁だ。
恋愛系のジャンルの本も勿論読むけれど、自分は誰かを好きになり、誰かを愛したいとは思わない。
「お一人様」で十分なのだ。
そう、興味がない。
端から見れば、あたしはつまらない部類の人間だろう。
華やかさもないし、人と話すのも得意な方ではないし、大勢でいるのは苦手な方だ。
放っといてくれれば、とてもありがたい事なのだ。
だから体育の授業や、グループを作って発表や何かをするという事が、なかなか苦痛なのである。
必ず自分が余るのは解っているし、先生に「お前らのグループに飯田を入れてやってくれ」と言われたグループの子達の、アウェイな雰囲気も嫌なのだ。
とても申し訳ない気持ちになるし、声を大きくして謝りたい。
「邪魔してごめんなさい」と…。
そんな自分が惨めで、自分を好きになる事も許す事も出来ない。
1人は気楽だ。
誰かに気を遣わなくていいし、誰かの意見を聞いたり尊重する事もない。
こんなに気が休まる事はないじゃないか。
それを寂しいとは、微塵も思っていない。
自分は自分、それ以下でもそれ以上でもないのだ。
放課後にこうして1人で過ごすようになったのは、入学してすぐだった。
うちの学校の図書室は広く、本の種類も数も多い為、本が好きなあたしにはたまらない場所だった。
休みの日に市でやっている図書館にも行くが、1番落ち着くのは図書室だった。
リクエストした本は、結構早く入荷されるのもありがたい。
何より嬉しいのは、図書室を使っているのが自分だけだから、心置きなく読書に集中出来る。
これはとてもありがたかった。
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