お気に召すまま。

あきら(ただいま休養中)

第1章/♪幸せは歩いてこない。だから歩いていくだね♪…何処に歩けばいいんだよ!

第1話

「美鈴…」


名前を呼ばれ、振り返れば男は何かを決心した顔つきをしていた。

もしかして、これは…!


期待してもいいのかもしれない。

遂に待ちに待ったあの言葉を聞ける時がきたのだと。

美鈴はそんな事を考えていた。


食事を済ませ、彼の車でドライブをし、今は車を公園の駐車場に停めて、公園内を散歩していた。

ドライブ中に沈黙が続いたのは辛かったものの、その沈黙はきっと彼があれこれ考えるものだったのだと、美鈴は自身に言い聞かせる。


「な、なに?」


逸る気持ちを抑えながら、いつものように振舞いながら返事をする。


「あのさ、俺…」


言いながら、男は頭の後ろの方に手をやりながら、そのまま首を触っている。

落ち着きのない時の彼の癖だと、美鈴は知っている。


仕事帰りの為、男はスーツ姿だった。

ネクタイは既に外されていて、首元が見えるが、どうやら汗をかいているようだった。

今日はそこまで暑くないのに。


そうか、やっぱり言い出すのは緊張するだろうし、汗だってかくわな。

それにしても歯切れが悪い。

そろそろ切り出してくれないと、心臓がもたないんだけどな、と美鈴は思う。


「ずっと考えてたんだけど…」


あたしも考えていたさ。

出逢った時からずっと。

そう、2人の幸せな未来の事を。

あたしが素敵なウエディングドレスを着てる事も。

美鈴はいろんな事に思い耽っていたが、すぐに現実を突きつけられる。




「俺、もう美鈴とはやっていける気がしないから別れてほしい」




時間が遅い事もあり、周りには誰もいないし静かな為、男の声はそれはそれはクリアに美鈴の耳に届いた。

え、こいつ今何て言った?


「美鈴は綺麗だし、可愛いところもいっぱいある。

 飯も美味いし、言う事はな…」


「じゃあ、何で別れるなんて言うの!?」


付き合い始めて2年が経とうとしていた。

お互いにいい付き合いが出来ていると思っていたのに。

混乱する美鈴を気にしつつ、男は言葉を続ける。


「何て言うか…正直美鈴とは結婚してもいいかなって思ってた。

 けど、その、さ。

 体を全然許してくれないし。

 抱き締めたりキスするのはいいのに、それ以上は全然じゃん?

 最初の頃は、そんな事はなかったのに」


美鈴はピクリと反応する。

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