第64話

「そっか……そうなんだ」


 二人の気持ちを聞いて、嬉しさと安堵がやってくる。

 もしかしたらと思っていたけれど、恋愛感情を向けられると知り、自分もずっとそれを望んでいたのだと気づいた。


「兄妹なの……気にならないの? それに……私」


 二人のどちらかを選べない。

 どちらも咲良にとっては大切でかけがえのない人だ。


「お前知らないの? 義理なら、兄妹でも結婚できるぞ。将来的には、俺か真のどちらかと籍を入れて、もう一人は養子だな。今のままでも家族には違いないが。いつかは夫になりたいからな」


 亨は、咲良の不安を予測し、汲んでくれたのだろう。


「どっちが夫になるかでまた揉めそうだけどね。俺たち、妹としての咲良も好きだと思ってるし、問題はないよ。どちらかを選ばないとなんて考えなくていいから。俺たちに独占させてくれればそれでいいんだよ」


 まったく不安を感じさせない声色で返されると、そういうものかと納得してしまえる。

 いつだって二人は咲良を愛してくれた。

 おそらく関係を変えようとしたのは、咲良のためだったのだろう。彼らからすれば、妹でも家族でも恋人でもなんでもよかったのだ。ただ、咲良に自分たちの想いの深さをわからせるために、少しずつ距離を縮めただけで。


(そっか……いいんだ)


 血が繋がっているわけでもないし、誰かに後ろ指を指されるような行いだってしていない。

 二人を好きだなんておかしいかもしれないが、二人がそれでいいと言ってくれるのだから問題はないのだ。


「そっか」

「咲良は体力的に大変かもしれないけど、これも俺たちに愛された代償だと思って頑張ってね」

「我慢してたぶん、どれだけ啼かせるかと思うと、ちょっと可哀想になるけどな」


 ははは、と楽しそうな双子の会話が聞こえてくると、なにやら背筋がぞくぞくとしてくる。


「が、頑張る……ね?」

「俺たちも頑張らないとな。なにせ未経験だし。いろいろ試させろよ?」

「そうだね。なにせ好きな子と毎日一緒にいるおかげか、想像力だけは逞しくなったけど、ちゃんと気持ち良くしてあげないとね」


 咲良は、今夜のことに想像を巡らせ、戦々恐々とした思いに襲われるのだった。

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