義兄たちの執愛に溺れてしまいそうです
本郷アキ
第一章
第1話
第一章
ご飯の炊けた音がキッチンに響く。
情報系テレビ番組では、来週に迫るバレンタインデーの話題が上っている。
またうちにチョコレートが溢れるな、と辟易とした気分になりながらフライパンの火を止める。
(まったく、毎朝毎朝……
咲良は、二階へ続く階段を睨むように見つめた。
曽根山家は東京都世田谷区の閑静な住宅街に建っている。この街は都内でありながら緑も多く、広々とした庭付きの一戸建てが多いエリアだ。
7LDKで庭つきのこの家に、咲良は四つ上で二十八歳の義兄、亨と
亨と真は二卵性の双子で、性格も見た目もまったく違う。
(少しは真くんを見習ってほしいよ、ほんと)
真はすでにテーブルについて、優雅に紅茶を飲みながら新聞を読んでいるというのに。ただ、ある一点においてだけは、非常に兄弟らしい仲の良さを見せるのが不思議である。
そのとき、リビングのドアの向こうから微かに洗濯機の終了を知らせるメロディオンが聞こえてきた。ご飯を蒸らしている間に洗濯物を干そうと咲良が振り返ると、一足早く真が立ち上がった。
「洗濯機終わったね。咲良はいいよ、俺がやるから」
真は、キッチンに立つ咲良の近くに寄り、髪を撫でた。
「ありがと。じゃあ私が干すから、カゴにだけ入れておいてくれる?」
「時間あるし、大丈夫だよ。今日は晴れてるから外に干して大丈夫かな」
窓の外を見た真が、続けて咲良に目を向けた。彼の両腕が腰に絡まり、引き寄せられる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます