第11話 1+1が2とは限らない…

「アレやで‼ ミリミリ‼」

「解ってる‼」

 ガシャンッと無断拝借した自転車を倒して走るミリアとハッカ。

「良かった…」

「あぁ、あの姉ちゃん無事みたいやな」

「いや…スパイク、空き地で良かった、正直コンクリとかだったら走りにくいな~と思ってた」

「…それスパイク、トラック用やん…土用ちゃうやん」

「ううん、いいの別にタイム競うわけじゃないから…ただ裸足で戦うの嫌だなって思っただけ」

「お~い‼ ゴス~大丈夫か~? 助けに来たよ~」

 ミリアが手を挙げてシータに呼びかける。

「………」

 振り向かないシータ。

「…?なぁミリミリ」

「なに?」

「なんか、あの姉ちゃん震えてへん?」

「そうか?」

 よく見りゃシータ、フルフルと肩を震わしている。

「なんだ~ビビってんのか?」

 ミリア、俄然マウントを取る勢いでシータに近づく。

「おいおいシータちゃん、こんなオナホールみてぇなのに怯えてんの~? かわいいな~」

「……食われた…の」

「あん?咥えた? 何を? えっ?コイツのナニをか~‼てかオスなん?コレ」

 目の前でフルフルヌチャヌチャしている黒い丸い塊を指さすミリア。

「なんや、この姉ちゃんもソッチ関係の人かいな? ほなミリミリの先輩やの」

 ドムッ‼

 ミリアのスパイクがハッカの腹にめり込んだ。

「ニョロが‼ ニョロが食われたの‼」

 叫ぶシータ。

「えっ? ちょっ…とちょっと‼ なに食うの? コイツ蛇とか食うの? 肉食?」

「アカン‼ 突然怖いこと言いなや姉ちゃん‼ ヘビ食うとか怖いやん‼」

「いや…違うってバカネコ、コイツ聖獣食うってとこが怖いだって…」

「……えっ? ワシも危ないのん?」

 改めてジッとフルフルヌチャヌチャしている黒い丸い塊を見るハッカ。

「どこが入り口だかもわからんような出来損ないの不良品風情にワシが?」

 コクンと無言で頷くミリア。

「いやいやミリミリ、ソレはないって、ワシ結構、高位な存在やで、あのヘビかて同じやん、なんなら同列やん」

「……ニョロは…武器化までできるほどに育っていた…のに…食われた…」

 シータが口を開く。

「武器化? なにそれ? コレ、そんなんことできんの?嘘? 片鱗も感じないけど?」

「武器化は…それなりに成長しないとできない…ニョロと私は結構な数、霊を狩ってきたから…」

「ミリミリ、格の差見せちゃるかいの~?」

 突然、ふんぞり返るハッカ。

「なんでアンタ広島弁?」

「いいから行くで‼」

「えっ? 武器化ってやつ? できんの?」

「いける気がするの~、なんや体がこう、疼きよんねんな~予兆ちゃうかな~」

「ヨシ‼ アンタ、その武器化ってどうやんの?」

 ミリアがシータに尋ねる。

「えっ? 武器化…自分のオーラを…ニョロのオーラと混ぜるような感じでピタッと合った瞬間に…武器化ウェポナイズ…って叫ぶとニョロが槍になる…」

「うぇいナイト?」

「ミリミリ…そのバカがはしゃぐ夜みたいなんちゃうで」

「……パーリナイッみたいなことじゃないの?」

「ちゃうわ‼ いいから武器化やんでミリミリ」

「おぉう…なんかテンション上がるわ」

「おう、あの不良品のオナホールにワシの爪で切れ目入れてやれや‼」

「ヌルヌル丸黒こんにゃくに切れ目入れてやんぜ‼」

「おう‼」

「武器化‼…なんだっけ?」

 改めてシータに尋ねるミリア

「…ウェポ…ナイズ…」

「ウェポ…ナイズ…ね、ハッカ‼ 武器化ウェポナイズ‼」

 なんかポーズをとるミリアとハッカ。

 ………静寂があたりを包む。

「どないやねん…」

「一応…聞くけど…何十跡くらい倒したの?」

 シータがミリアに尋ねる。

「……この間…一跡…てか跡でカウントするんだ霊」

「…足りない…圧倒的に聖獣の経験が…足りないんだと…思う…」

「おい」

 ミリアの前でフルフル震えるハッカの頭を片手でムギュッと掴んで持ち上げるミリア。

「オマエ…何が疼いたんだ?」

「……なんやったんかね~」

「あー‼ 面倒くせぇ‼ ハッカ爪出せ‼」

「はい‼」

 両手でハッカを抱えて頭上に高々と持ち上げるミリア。

「ハッカ万歳‼」

「万歳? あぁこういうこっちゃな」

 ハッカが前足を挙げて万歳のポーズをとる。

「おらっ‼ 切れ目入れてやんよー‼」

「いったれー‼ ミリミリ‼」

 サクサクッ…

 丸黒こんにゃくがハッカの爪で切り裂かれる。

 ………

「なんも起こらんの…」

 後ろ足を持たれたままブラーンと逆さまにぶら下げられたハッカが首をかしげる。

 おもむろに割けた隙間を両手でグイッと広げて中に首を突っ込むシータ。

「ちょっ…ちょっと」

 慌てるミリア。

「さすがやな…ローションに慣れてはるわ、あの姉さん、ひょっとして嬢やなくて姫なんちゃうか?」

「そうなの? 嬢とはまた一味違うって感じよね~格が違うのかしら?」

「…ニョロ~…いる~?」

「シータ?」

「ニョロ~‼」

 シータが中に深々と手を突っ込んで青い蛇をズルンッと引きずりだす。

「卵に戻った気がしたわ…思わず寝ちゃったわ」

「呑気なヘビやで、呆れるわ…」

 PiPiPi…

 ミリアのスマホが鳴る。

「なに?倒したっぽいわよ」

「バカ…アンタ達が何されたってんのよ?」

「はい?」

「殻を割っただけだって教えてあげてんのよ」

「殻? オナホールの? あぁ箱から出した的な感じ?」

「うん…そういうオプションもあるわね、それはおいおい覚えなさいね」

「……なんか…ヤバい…」

 シータが少しづつ後ずさりしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る