第41話

机の上に積まれた書類。




あれ、夏休み前の激務は何だったんだろう夢?幻覚だったの?



そう思わずにはいられない量の紙でできた塔に、静かに目を閉じる。



目を開けたら無くなっていますように。


全部吹っ飛んで消えてますように。




「オーマイゴッド。」




心で必死に唱えた願いも虚しく、瞼を持ち上げた先には変わる事無く書類のエベレストが聳えていて、頭を抱えた。




唯一の救いは空調設備が万全だという事だろうか。エアコンが効いている部屋は涼しくて快適そのもの。窓の外の暑さとは無縁な環境だ。



天気予報で言ってたけど、今日最高気温38℃らしいよ。


お天気お姉さんなんて言う意味の分からないぶりっ子女がわざとらしい笑顔で「38℃は命の危険が伴う暑さです。」って言ってたよ。



最後の最後で「皆さん死なないように今日も一日頑張りましょう。」と画面の向こうで手を振る絶対青学準ミス(決めつけ)のお天気お姉さんを眺めながら、とんだ鬼畜女だなと思った。




命の危険が伴うのに死なないように頑張れってとんだハードモードなミッション与えてくれるじゃんかよ。



なんか道梨が言いそうだな。






そんなどうでも良い事を考えて、仕事から現実逃避をする私の鼻孔を掠めるのは甘くて美味しそうな香り。





「それで、見る限りどうやら莉苑君は今年も真白のお家でホームステイをするようだね。」





耳に届いた鈴の声で、私は窓の外に向けていた視線からそこへと滑らせた。

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