第39話

「嫌だ。真白は僕のだよ。」




閑静な住宅街に響く、りー君の中性的な声。



甘えるように私に抱き着いてくる彼は、最後に会った日よりも随分と背が伸びている。




夏の暑さも陽射しも関係なさそうな、りー君の白い素肌が私の肌に密着した。





「は?」





りー君の放った一言に、目を丸くさせた剣が硬直している。



おい大丈夫か石化したんか。


このままだと目玉転がり落ちそうなくらい剥き出てるぞ。





「やれやれ、今年も始まったね。」




一方の夢月は額に手を置いて困惑しつつも、笑みを漏らしている。



だけど、りー君を見る視線は氷点下のシベリア並みに冷たい。



え?夢月?え?…なんかとてつもなく鋭い目つきなんだけどえ?そんな夢月も最高にエロスだけどえ?!?!?






「夢月が真白を狙っていただけでもふざけんなよぶっ殺されたいのかって思っていたのに、まさか僕の知らない間に真白にこんな品のない頭の悪そうな彼氏ができていたなんて…。」


「ちょっと待て、美少女姿でとんでもねぇ暴言吐いてくるじゃねぇかこいつ。」


「断固反対。絶対阻止。おいお前。」




表情を険しくさせたりー君に指を差された私の恋人は、心底不満そうに顔を歪める。




「お前じゃねぇ、鬼帝剣だ!!!」




いやそこかよ。



不満に思った所そこなのかよ。自己紹介するなんて律儀かよお前。




「じゃあ剣。」


「呼び捨てにすんな。」


「おい剣。」


「俺の話を聞けや。」




声を上げる剣を無視したりー君は、自分の髪を掴んでロングのウィッグを華麗に脱ぎ捨てた。



サラリと音を立てて現れたのは、頬に掛かるくらいまでしかない短い髪の毛。



地毛の艶がかかった黒髪は、ウィッグよりも断然りー君に似合っている。

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