第2話
私の目の前で絶望した顔をしている綺麗な男。
顔だけは、綺麗な男。
「……空耳か?」
「心配するな現実だよ馬鹿。」
「あああああ?」
煩いな!!!!
私の耳をぶっ壊す気かこいつ。
大袈裟なくらい崩れ落ちて、地面を叩く男を軽蔑した目で見下す。
「何でだよ!晴れて俺達夫婦になったんじゃねぇのかよ。」
「なってねぇよ。」
「そしたらセックスする定めだろうが。」
「何処の法律だよそれ。」
「ふざけんな!!!!」
「こっちの台詞だよクソ!!!!」
嘆く男がちらりと顔を上げて私を見る。
前髪越しに覗く鋭い双眸に捉えられるだけで、ドキリと脈を打つ心臓。
「俺は真白が好きだ。」
「……っっ。」
相変わらずこいつの言葉は直球過ぎて、受け止めるだけで精一杯になる。
「…私だって、剣が好きだよ。」
頬が熱くなる感覚に耐えながら言葉を紡げば、相手は目をキラキラ輝かせた。
「じゃあ問題ねぇだろ、セックスしようぜ。」
「問題しかねぇよ、そんなゲームしようぜみたいな感覚で言うな。」
「……セックス致しましょう。」
「言い方変えたところで意味ないんだよ!!!」
何だお前、我儘だな。そう言って眉間に皺を寄せるこの馬鹿を今すぐぶっ飛ばしたい。
「何が不満なんだよ。」
「全部だよ。」
「あ?」
「順序を踏みたいって言ってんの。」
「だからこそまずはセックスだろ。」
「お前は野生動物かよサバンナに帰れ。」
このままだと永遠に平行線な気がして、白目を向きそうになる。
忘れていたけど、この男散々女を食い散らかして生きて来た割には誰とも付き合った事はないんだった。
めちゃくちゃ恋愛初心者の若葉マークじゃん。
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