第84話
ソファに腰掛け、長い脚を組み、肘掛けに凭れるように頬杖を突いている夢月は非の打ち所がない。満点。花丸。結婚して。
そんな夢月が満面の笑みで聖架を見る。
「聖架、ステイ。ハウス。」
「………分かった。」
おい何で分かった!?!?!?!?
犬なの!?そうなの!?まさかの調教済みなの!?
美味しそうなクッキーが大量に乗った皿を持ったまま、目を伏せてキッチンへと消えて行く聖架の背中は大きいはずなのに小さく見えた。
これで私を助けてくれる人員は見事に消された。
「夢月は怒ってるの?」
「そうだね、とっても怒ってるかも。」
ですよね。愚問でしたね。
でも…どうして怒ってるの?
こうして本気で怒ってる夢月を見ると、嫌でも期待してしまう。
私があの肉欲獣といる事に怒ってくれてるんじゃないかって、勘違いを起こしそうになる。
苦手な問題は、何度も復習や予習を重ねればいつか解けるようになるけれど、夢月の心だけは数十年も一緒にいるのに全然解らない。
「ごめ…んなさい…。」
こうして私を責めるのは、幼馴染としてなのか、兄としてなのか。
どっちにしろ残酷だ。
「ごめんなさい。昨日の今日で…夢月が心配してくれてるのに無神経な行動しちゃってごめんなさい…。」
あーあ、涙が浮かんできてしまった。
折角の麗しい夢月も涙で滲んで視界がぼやけてしまう。
すぐ泣く女なんて大嫌いなのに、止まってくれない。
もしかしたら夢月に見限られるかもしれないと思った途端これだ。私ってば最強に面倒でウザい女だ。
絶対会いたくて会いたくて震える系女子だ。
「お願い夢月嫌いにならないで。何でも言う事聞くから。もう勝手な事しないから。」
一度出たら勢いづく涙と言葉。
しかも口から零れる言葉が、自分でも思うくらいもれなくウザい。
普段は、自分を可愛く見せようと打算でしか生きていないけれど、今となってはもう可愛さとかどうだって良かった。
とにかく王子様に見捨てられたくない。その一心だった(プライドゼロ)。
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