第73話
いくら高校だとは言え、不良揃いの悪名高い開花高校。
そこに単独で乗り込むなんて、相当勇気がいったと思うし、多少なりとも恐怖心だってあっただろう。
それでも夢月は私の元に来てくれた。
この現実を全世界に自慢してしまいたくなる。
どんなゲームや映画の主人公よりも遥かに夢月が立派な勇者だ。
「夢月!!!!真白は無事だったの!?!?」
どうやら彼に連れて来られたのは生徒会室だったようで、勢いよく開かれた扉の向こうには息を荒げた鈴が立っていた。
駆け寄って、私を見るなり安堵したように息を漏らした鈴。
「良かった…。本当に良かった。」
「鈴、心配かけてごめんなさい。」
冷静沈着で穏やかな普段からは想像できない程乱れた姿に申し訳なくなる。
「真白が謝る必要なんてないよ、一番怖い思いをしたのはきっと真白だからね、無事でホッとしたよ。」
注がれる優しい言葉。
本当は微塵も怖い思いなんてしてないけれど。
いちごみるく飲んで寛いでいたけれど。
その事実は闇へと葬っておこう。
「真白!!!会いたかった!!!」
生徒会室に響く声。
間もなくして現れた人物に私は思い切り抱き締められた。
「こら蘭、真白にくっつきすぎ。」
すぐにその人物に注意をする鈴は、既に冷静さを取り戻していた。
「心配でたまらなかったんだからこれくらい許してよ鈴。」
唇を尖らせながら、私の身体に絡めた腕に力を込めた蘭。
ベタベタに私にくっつく蘭は一つ上だけれど凄く可愛い。
その背後に佇んでいた聖架が不意に目に映った。
「お帰り真白。」
「ただいま。」
「ああ。」
僅かに緩められた口許。
私の頭に乗せられた聖架の手は大きくて優しかった。
「お前達、真白を独り占めしないでよ。」
「まぁまぁ、拗ねないでよ夢月。皆真白が可愛くて仕方ないんだから。」
不満そうに嘆く夢月を宥める鈴。
女の誰もが頬を染める美形揃いの生徒会。そんな生徒会で甘やかされている私は毎日が幸福に満ちている。
もう誰にも心配はかけたくない。
そして、この平穏で贅沢な日常を崩壊させたくない。
だからこそ、二度と虎雅とは関わらないでおこうと、強く胸中で誓いを立てた。
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