Dummy Honey Ⅱ

*A

第64話

パチクリ



パチクリ




何回か瞬きをしてみたけれど、変わる事ない目の前の現実。


私の胸の中で寝息を立てている飛鳥みたいに、眠ってしまいたい衝動に駆られる。



それくらいにはこの現実から逃避したかった。



最後の最後にとんでもねぇ濃いキャラクター出てきたんだけど。




「ちょっと道梨、この子誰よ。」



しかもかなり見られてる。


もう完全にがん飛ばされてる。




「これ?痴女。」


「おい。」


「違ぇ。こいつはマカロンだ。」


「真白!!!!」



首絞めてやろうか。


さっきから洋菓子の名前ばっかり連呼してくれやがって。


至って真剣な顔で私を「マカロン」と呼び捨てる肉欲獣に青筋が浮く。




「やだ可愛い何この子すっごいタイプ!!!!」


「え。」



がん飛ばされたかと思えば、勢いよく突進してきた人物が私の頬を撫で回す。




「漸く見つけたわ理想のお人形さん。」


「すみません。」


「私が作った可愛いお洋服を着こなせるのは貴方しかいないわ!!!」


「あの…。」


「ぜひ私のワンピースを着て欲しいわ。」




こいつの耳はお飾りなのか?


全ての話を遮られ、私の顔を触っては目を細め笑う男。





「はい。」


「どうぞ。」


「帰っていいですか。」


「駄目に決まってんだろ。」


「何であんたが答えるのよ。」




道梨へと向けたはずの質問が、肉欲獣によって即答された。


まず、いい加減ズボン履けよ。




「そうだよ、まだ生徒会のカップリング聞けてない。」


「あの話まだ続いてたの!?」


「僕の中では王道な感じで、紫陽花と宮園鈴がデキてると思うんだよね。それをカモフラージュする為に紫陽花はあんたを隣に置いてるっていう設定なんだけど…どう?」


「私の設定雑すぎかよ。却下。」




何だカモフラージュで私を隣に置いてるって。


夢月と鈴がデキてるなんてこと、絶対死んでも許さない。


どんな期待を抱いているのか、目をずっと輝かせている道梨。


他の三人をどう妄想のおかずに使おうと構わないけど夢月だけは駄目。


夢月は私だけの王子様って決まってるから。

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