第92話

私は知ってる。

篠宮があまり私を、私達を、良い感じに思ってない事は。だって、毎回瞳の奥に疑いを掛けて話し掛けてくるから。


美織は気付いてないみたいだけど、私は分かる。


多分、榊が美織を気に入ってるから美織は『守る対象』になってて、美織のお願いで私もついでに『守る対象』になってるけど、そうじゃなかったら私はこんなふうに篠宮と会話することもなかったのだろう。



先程、見掛けたから来た…だなんて言ってたけど、違う。壁の向こうからこちらの様子を見ていたのを知ってる。


…何かあったら叫んで篠宮呼ぼうと思ってたし。




「ま、楽なもんじゃないね、お互い」



『蒼虎』を守る副総長と、『妹』を守る私。



へらりと笑って、篠宮に倉庫行くんでしょ?と声を掛ける。それに、はい、と答えたのを見て保健室を出る。



すると、篠宮も付いてくる。




立場上『信じるだけ』も簡単じゃないのだろう

暴走族、しかも

関東No.1の総長を支える役目なのだから。


なんて、脳裏で考える。




「貴女は、何を知ってるんでしょうね…」


私の背中を見て、歩く篠宮が、ぽつり、そんな言葉を零したのを私は知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る