第50話

すると、路地裏で倒れてた男の1人が、私に手を伸ばしてきた



「逃がすかってーのォ…!」


「ヒッ、」



「美織っ!!!」



目の前に迫り来る男の手、

桃ちゃんの叫び声、


「(や、やだ…!!)」



ギュ、と目を瞑った







────ドカッ!!



何かが蹴られる音と、何かが倒れる音がした。…なに、なに?混乱した頭で考えるけど思いつかなくて。

目を開けた



そこには、


────赤い瞳の綺麗な、男の人。




路地裏独特の暗さで、その人の姿はしっかりと見えない。けど、さっきの人とは違う赤。


瞳だけは何かの光の反射で煌めいて見えた。

…キレーな、赤が。





「おや、志都。

今日は随分と手が早いですね」


「うっせぇ。

…おい、大丈夫か。テメーら」




あれ?なんだか聞いたことのある声な気がする。なんて思ってたら、赤い瞳の人はメガネの人をヒト睨みして、私の方へ来る。

メガネの人は桃ちゃんに声を掛けていて、桃ちゃんは泣きながらお礼を言っていた。




男の人が近づく度に、ガタガタ、体が震える。本能が男を怖がっている。





「……大丈夫か…?」


でも、この人の声には心配している気持ちが詰まっていて。

優しい人なんだなって、思って…私は、





「…?、おい!?」


「あり、がとう…」





ぷつりと




気を失った。

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