第19話

それから少し歩いて、街外れの喫茶店みたいなところに来た。

そこは、黒と白のモノクロカラーのお店。シックな雰囲気がどこか落ち着く。



「ここは…?」


「昔のあたしの仕事場みたいなもん」


「…仕事場…?」


「まぁ、コッチに来たのはホントに久しぶりだからねぇ。少し埃っぽいかも知れないけど許してねー?…っと、消毒と包帯…あと保冷剤あったかなー」



そして、暁さんはごそごそと棚を漁り物を探してる。




「…あの、暁さん、は。」


「んー?」


「…えと、何で、私たちを…?」


「あー、そりゃ気になるかぁ。


…あたしね、アンタらの母親とは、海より深ーーい縁があってね。色々とあって昔は関係あったんだけどねー、ある日から縁を切ってー……まぁ色々あるんだけど、一言で言うと私アイツのこと大嫌いなんだよねぇ。


…っと、あったあった。」



そう言って、救急箱を取り出して美織の手当てを始める暁さん。



「と、とりあえず、暁さん…は、私達のお母さんが嫌い…と?」


「そうね、うん。お父さん、の方もだいっっきらい!」


「…まぁ、あんな人達だからフォロー出来ないし。嫌いになるのは分かるけど」


「おお、トモエちゃんは分かってんねぇ」



なんて言いながら手際よく美織の頬に消毒をしてガーゼをつけてくれた暁さん。


ケラケラ笑う彼女の笑顔は、少し子供っぽく見えた。

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