第6話
あたし、
外的な環境よりも自分の内部につよく意識が向いていたあたしは、学校という息苦しいほどに閉鎖的なコミュニティのなかで、どちらかといえばおとなしいタイプに分類されていた。
そんなあたしは、しばしば学校の図書室に通っていた。いろいろと深い理由がある。
「睡。この間の本、どうだった?」
今在零は、毎週火曜日にカウンターの奥に座る、生真面目な図書委員だった。いつも座り心地の悪そうなパイプ椅子に座って、足を組んで文庫本を片手にしている、うつくしいひとだ。
カウンター越しに仲良くなって、本の感想を言いあったりしているうちに、いつの間にか一緒にいることが当たり前になって、ゆるくお互いを求めるようになった。はじまりってたぶん、それくらい曖昧なものだ。
「ラストシーンで双子が入れ替わるところ、想像してなくてびっくりした」
「ああ。あそこ、怒涛の展開ってかんじだったよね」
「うん、すごくよかった」
零は色素の薄い美少年だ。太陽の光をよく透かす綺麗な肌に、アーモンド型に整えられた瞳には睫毛が繊細に飾られていて、目尻に双子の黒子が並ぶ。
神様がピンセットを持って、丁寧に仕立て上げた一級品は、触れたらほろほろと崩れてしまいそうな繊細さを孕んでいる。
けれど零はあたし同様、学年では「しずかでおとなしい人」というレッテルを貼られていた。
本来ならば学年の人間関係なぞ、かんたんに無双できるであろう顔立ちなのに、零がそういうポジションを避けて静かに過ごせるのには、もちろん理由があった。だがこのことは話の本筋となんら関係がないので割愛する。
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