第59話
さらば、私の薔薇色の高校生活。
ようこそ、私の地獄の高校生活。
たかだか一歩踏み違えただけなのに、奈落の底へと真っ逆さま。
否、踏み違えた一歩が余りにも大き過ぎたのだ。こんな事になるのならば最初から他人のお世話をするだけの陸上部マネージャーに希望表を叩き付けるべきであった。
してもし切れない後悔が募り募って、チョモランマ。
もっとちゃんと部活や委員会を下調べするべきだった。まさか私の怠惰な生活の皺寄せがこんな形で表れようとは夢にも思うまい。
私のカーストが新幹線のぞみよりも速く底辺へと堕落したけれど、そんな変化は実に小さくて他愛のない物に過ぎなくて、当たり前の様に一限目の教科担任が教室を訪れ、当たり前の様に授業が始まる。
「それでは前回の単元の復習から始めます。」
一斉に教科書を開く音が教室に鳴る。
そうして初めて、私へと向けられていた好奇や嫌悪や奇怪な視線から解放された。
皆が右へ倣えば、自分も零れ落ちぬよう右へ倣う。
皆が左へ倣えば、自分も零れ落ちぬよう左へ倣う。
そんな日本人の性質は、この小さな箱庭にもしかと反映されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます