第57話

星利side

「で、話は逸れたけども。

ザクラちゃんのこと、どうするの?」

「うっ・・・」

「告白するの?しないの?」

「・・・するよ」

そう言うと、仲間たちは嬉しそうにほほえんだ。

「よし!それでこそ男だ」

「当たって砕けてこい!」

「く、砕ける前提かよ!?」

まだ良い結果が出ていないというのに、仲間たちははしゃいでいる。

「・・・まあ、砕けるとは思えないけどね」

ぼそりと水神が何かをつぶやいた。

「なんか言ったか?水神?」

「ううん。何も」

「で、それでなんだけどさ?」

「ん?」

仲間たちは一斉に俺を見る。

「ど、どう告白したらいいと思う!?」

恥を忍んでそう言うと、仲間たちは目を丸くした。

「え、星利くん。今まで告白したことは・・・?」

「ねえよ!春風が初めての女なんだよ!」

「うわぉ!」

仲間たちに何度目かのひやかしを受け、ようやく自分が何を言ったのか分かった。

「ちょっと、星利。言い方が・・・」

姉貴がたしなめる。

「うわあ、めっちゃ恥ずかしいこと言った・・・」

顔が熱い。クッションに思わず顔を埋める。

「あんたは乙女か!」

すかさず仲間たちからツッコミが入る。

「まあ、でも分からないよね。

普通の女の子ならともかく、相手はザクラちゃんだからさ」

「そう言われればそうね。

ザクラは仲間の気持ちの変化には獣並みに勘が鋭いくせに、そういう恋沙汰は鈍いもの」

「ザクラちゃん自身は、恋愛したことあるのかしら?あんなに綺麗だから、恋愛の1つや2つしたことありそうだけど」

「いや、ないですね。陰でモテてはいましたけど、

本人は全く知らなかったし。それに当時は武術一筋でしたから」

「へぇ、意外だね」

「橋渡しをして欲しいと頼まれたことがたくさんありましたけど、どれも敗れましたね」

「なるほど」

「でも今回はなんとかなりそうかと」

「え?」

「ザクラのことを知り尽くして十数年、わたくし、水神鈴。

大人の酸いも甘いも味わってきた、風丘星香さん。

冷静かつ的確な判断を下す、柊北斗くん。

が、揃っていますから」

「・・・なんか俺だけパッとしてないよ?鈴ちゃん」

「いや、冷静な判断は大事よ?」

「まあ、そうだけど」

「あとはザクラちゃんがどう思っているかだろうけど。嫌いではなさそうよね」

「はい。嫌いだったら思いっきり嫌悪感丸出ししますから。あの子は」

ふと俺の頭の中で、過去の記憶が蘇る。

---そういえば、『梅壺ハル』とかいう女がいた時、嫌悪感丸出しですごい顔をしていたな。

「・・・確かに」

仲間たちも同じ映像が出たのだろう。

こっくりとうなずいた。

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