第20話

「そんなことが・・・」

マルリトスの話を聞いたザクラは動揺していた。

「ウィ-ン・ウォンドも、元はただの人間だった・・・」

「今は人間ではないがの。まったく、死んだ人間を生き返らせるだなんてできるわけないのに」

そう言ってマルリトスは鼻をフンと鳴らす。

---死んだ人間が生き返るすべがあるのなら、とっくの昔にやっている。

と、ザクラは棚の上にある母の写真を見る。

「死んだ人間は生き返らない。だから、わしら生きている者は、それを受け入れて生きていかねばならないんじゃよ」

「マルリトス・・・」

「おぬしなら、まだ大丈夫じゃ。そのまま前を向いて歩いて行け。あのバカ男はそれができなかったからの」

その言い草にザクラは目を丸くする。

「・・・ずいぶんと加減しないんだね。

飼い主の恋人だった割には」

「あんな奴、地獄に落ちろと思っているが?

遺体は朽ち果てても放置したままだし、魂までも赤い石のペンダントに封じておるし。

まあ、遺体は3人の人間が埋葬してくれたが。

いつまで経っても、あの人は行くべき場所へ行けぬではないか!」

マルリトスはくるりとザクラを見る。

「わしは死んだあと、海の女神さまに頼んだのじゃ。

いつかまた、あの男が力を取り戻しにくるから、男を成敗するであろう者の手助けをしたいとな。

そして長い長い時間を経ておぬしが生まれ、今に至る。

50代目。わしからも頼みたい」

「え?」

「あの人の魂をあの世へ送ってあげたい。

だから、あの男を倒してくれ」

マルリトスは頭を下げてそう言った。

「マルリトス・・・」

「いくらなんでも、あの世へ行けないのは酷すぎるではないか!」

「わかったよ、マルリトス」

ザクラはまだ少し動揺しながらも、マルリトスの頭を上げさせたのだった。

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