第18話

マルリトスside(ザクラに語り)

・・・わしは幼い頃、捨て猫だった。

ふりきしる雨の中、早く止むことを願いながら小さくなっていた。

だが、雨の勢いは増すばかりで、わしは止むことを願い続け、ようやく雨が止んだ。

と、思っていたら。

雨が止んだのではなく、一人の女が傘をわしに差していた。

こうしてわしは、彼女の飼い猫となった。

それがすべての始まりだった。


彼女は首から赤い石のついたネックレスをし、

長いブロンドの髪で、それはそれは美しい人だった。

彼女には、恋人がいた。

見目麗しくはないが、彼女のことを一途に愛していた。

彼女は彼女で、そんな彼のことを愛していた。

だが、運命とは酷なものだ。

彼女は不慮の事故に遭い、突然この世を去ってしまった。

突然起きた愛する人の死。男は泣き崩れた。

隣でわしも悲しみに暮れた。

その悲しみはきっと誰にも分からない。

彼女の死は男を変えてしまった。

死を受け入れられない男は、なんとか彼女を生き返らせようと、あらゆる魔術や禁術に手を伸ばした。

元から力を溜め込みやすい器をしていたのだろう。

気づけば男は、人ではなくなっていた。

だが、命は返せない。保存していた彼女の遺体は次第に朽ち果て、それが人だったとはいえない状態となった。

一方、彼女の魂は男の術により、彼女の遺品である、赤い石のペンダントに封じられた。


男は神にでもなろうとしたのだろうか。

いつしか禁術のみならず、人の命のエネルギーそのものを奪っていった。

やがて男の前に、3人の人が現れた。3人は男の力を3つに分けて封じた。

それが『火焔石』『海宝石』『イルカ国の海宝石』と言われている。

3人を呼びつけ、男の抹殺を願い出たのはわしだった。だから男に殺された。

だが、海の女神の慈愛により、海宝石の精となった。

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