第12章 銀の人魚

第1話 思い出

第15話

『ウィ-ン・ウォンドを倒す際、海救主の命に危険が迫る』

そんな決して簡単には避けられやしない未来に、ザクラが打開策を練っている中、ぼんやりと星利は青空の下にいた。その近くには筋トレに励むザクラもいた。

「暑いな」

筋トレに励むザクラを眺めながら星利は呟く。ザクラたちの乗る船は、目下南へと進んでおり、暑さが日々増すばかりであった。

「春風、そろそろ休憩しろよ」

は-いとザクラが返事をして立ち上がる。

暑さのせいか、運動したからかザクラからは汗が滝のようにポタポタと落ちていく。

「あ-、暑い」

ザクラは傍に置いておいたタオルで顔をふく。

「よくやるな、こんな暑いのに外で筋トレだなんて」

「できることはやっておかないとと思ってさ」

ザクラはそう言って水筒の蓋を開け、美味しそうに喉に水分を流す。ため息まじりに口を拭う姿はなんとなく色気があって、星利は慌てて顔を逸らす。

「力を増幅させるにはやっぱり基礎からでしょ。だから筋トレをね」

「確かにそうだけど、ぶっ倒れたりするなよ」

「わかってるよ。大丈夫だって」

「お前の『大丈夫』は、あまり信用ならんな」

それを聞いて、ザクラは頭をかいて苦笑する。

ザクラ自身、今までの旅の中で幾度も激しい戦いを乗り越え、大丈夫と言って倒れたことが多い。その度に星利たちは心配し、肝を冷やした。

「運命に抗いたいのは痛いほど分かるけど、気をつけろよ。今日だって、絶対長いことやるだろうからって見張り役をしているんだからな」

「は-い」

にこりと笑ってザクラは言った。

「本当かよ」

その花の咲くような笑顔に誰よりも惚れている星利は顔を赤くした。

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