第14話

その後、どう部活動の時間を過ごしたか鮮明には覚えていない。


でも、その日は確か先輩が来ていたので何があったか周りにバレないようにするのに必死にいつも通りにしてた気がする。


先生にキスをされた夜は全然眠れなかった。


寝返りを何度もうって、胸の中に溜まる先生を思う熱をじっくりと味わっていた。


細谷先生、あたしはあなたを好きになってしまう。


憧れていたし、あたしは……



先生は忘れてほしいかもしれないけど、簡単に忘れるわけない。


この、先生への気持ち。あたしは否定なんて出来ない。好きになりたい。



でも相手は結婚だってしてるし、そもそも教師と生徒の恋愛なんて許されるはずない。


あたしはどうしたらいいか、分からない。



次の日、部活に行くのに勇気がいった。


この日は運が悪いのか、あたし以外部活動に誰も来なくて2人きり。


あたしは吐きそうだった。細谷先生を好きな甘い気持ちで胸が高鳴ったから。


自分の気持ちを伝えようか迷っていたら、先生に昨日は申し訳なかったと謝られた。


「教師として恥ずべき行為でした。鈴宮さんを混乱させてしまい、ごめんなさい」


先生が泣きそうな顔をしていた。


その、ごめんなさいを聞いた時、あたしは先生を好きになってはいけないと思い直した。


それに先生と仮に付き合えたとしてもとか、その先にどうにかなる……つまり親密になりたいなんて無理な話。



今まで通りで良いんだ。お互いに交わらない。


あのキスは、あたしと先生だけの秘密にしておこう。


そして、先生に恋愛感情を抱いた事実はなかったことにすればいい。


あたしの心に残る甘い熱は知らないフリをすればそのうち忘れる。


いや、無理矢理でも忘れるべき。

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