第7話

不良の言葉が心に滲んで痛みだした。


イライラして、我慢できずに涙が零れそうになったその時。


細谷先生は不良の生徒を鼻で笑った。



「不良の君には芸術の美しさや、儚さ、尊みがわからないのですね。まあ、到底理解出来ないでしょうね。感性が乏しいんだろうから」


普段優しい先生がそんな厳しい発言をするなんて、びっくりした。


先生はあたしに、鈴宮さんの絵は素晴らしいです。なんてったって、努力もしている天才です。


一生懸命な人を悪く言う人間は必ずいますが、自分のした努力は絶対に裏切らない。

だから、人にけなされても諦めたりしないで欲しいですと優しい言葉をかけてくれた。


その後不良を再び見て、感性のまるでない人間は哀れですねと残念そうに言い放った先生。堂々としていた。



不良は顔を真っ赤にして怒り、舌打ちしたあと、クソッたれと悪態をついた。


何だか、感性が乏しい不良が可哀想に思えてならない。


美しいものを美しいといえる素直さや追求する気持ちがないなんて。

多感な時期である高校生なのに、芸術に対して何も感じないのだろうか。


それを嘆いたりしないのが悲しい。


日々いろんなことを感じるはずなのに、それに対して立ち止まって考える機会が、きっとなかったんだ。


あたしはそうじゃない。


何気ない言葉だって、心に感じる喜び悲しみ怒り、痛みだって大切にしたい。


感じたこと全てに意味があるのだから。


大切にしたいものを絵として、具体的な表現をしたい。だから、あたしの絵を否定するのはあたしの心を否定しているも同然。

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