第5話

声のする方を見ると、教卓に頬杖をついて、僕のことを見ている女子が居た。

体育の時間だというのに僕と同じ制服のまま。


やばい、いつの間に居たんだ?


周りに見られないように気を付けていたはずなのに。


黒髪のベリーショートヘアーがよく似合う、いつも気の強そうな感じの藤代有紀ふじしろゆうきさんだ。同じクラスだけど話したことがない。


「あ、もしかして佐枝君、生理なの?」


藤代さんが笑いながら言った。きっと馬鹿にしてるんだ。


「は!?ちがっ!」


怖くなった。もう終わりだ。


僕のやっていることは泥棒。


警察に捕まるしかない。


「な、わけないか。それ、女の子専用のものだよ。取らないであげて。生理用品だから」


ああ、生理の時に使うのか。

いまいち使い方は分からないが、生理中の木村さんが使うのかと思うと興奮する。

この期に及んでまだ、興奮するとか。本当に僕はどうしようもない奴。


取らないでと言われたので、ポーチに戻して、

バッグに戻した。



「ねえ、佐枝君。君のやってることって相当まずいよね。前から盗んでたの知ってたけど、バレたら一生の終わりだね」


前から知っていた? そんな、知られてたなんて。


バラすつもりなんだ。僕はもう人生終了だ。どうしよう。


怖くて怖くて、自分のした行いに後悔を感じはじめた。


「佐枝君、バレたくないよね? じゃあ、あたしの言う事聞いて」


藤代さんは僕に近づいてきた。

ボーイッシュな髪型してる割に意外と顔が可愛らしい。あと、胸が大きいな。


「ねえ、聞いてるの」


パシリにでもされるんだろうか。バレるより、一生パシリで居たほうが断然マシだ。

それに、可愛い子に使われるのは、そこまで悪い気はしないし。

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