第47話

それに、息を呑む。






そっと視線が絡み合うと、義父上は静かに微笑んだ。














「…勘違いするなよ。気負えと言うておるのではない。例えじゃ、例え。



我ら島津の家紋である龍は、守護の神とも呼ばれておる。



それになぞらえ…ただお前らしく、優しく皆を守って行けと言うことじゃ」
















島津を守りし…龍。








その強くも美しい言葉が、どういうわけか何の違和感もなく胸の奥深くに沈んでいく。









沈んでは…馴染んでいく。








それはまるで。







荒みきっていた己の心の一部となるかのように。
























「—————————頼んだぞ。…久保」





























力強く呼ばれたこの名に、全てが繋がりそして己が何者かということを思い知らされ…深く目を閉じる。













—————————————天命。











それは、天から与えられた使命ということ。


















私の天命は。









——————島津を守りし龍となること。













そっと目を開いて、深く平伏した。












「…心して…務めて参ります」











家紋としてこの背に背負う、守護の化身とされる龍の如く。










この名に託された、『島津を永遠に守る』という偉大なる先代からの願いを胸に。












その天命を、ありのままに受け入れろ。















それこそが私のこの身に宿る…












————————宿命なのだから。

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