第88話 空の上で愛は深まる

中居さんは今回も優雅な席を用意してくれていた。




窓からは、綺麗な茜色の夕焼けが見え、帰る事を実感する。







「蓮伽さん......」




帰りも、甘い口づけで空の旅はスタートする。





何となく、深澤くんの雰囲気が変わった。




心の底から私を信用してくれるようになったのだろう。空気感でわかる。

今までの深澤くんは執着にむしばまれ、愛で求めるよりネガティブな自我で私を求め、抱いていた部分も大きかった。

愛情がありすぎて本人が持て余していた感じだったが、今は穏やかでネガティブな感情に囚われている感もない。





「良かった....」


「ん?何が?」


「深澤くんから、ネガティブな空気がなくなった。」


「....それは、蓮伽さんの力だよ。蓮伽さんが僕を変えたんだ。本当に愛おしい....蓮伽さん」


「ん.....、ふふっ。」





(キスに色気が加わっている.....何、この感覚.....)





「な、何?」


「キスに余裕が出来てる...貪って来なくなった(笑)」


「(笑)そう?貪って欲しかった?」


「今はさすがにない(笑)あれだけ、愛し合っちゃったから。まだ、深澤くんが中にいる感覚さえある(爆)」


「.....うわっ、蓮伽さんって魔性。」


「ん??」


「ううん、なんでも」




<蓮伽さん.....無意識なのかもしれないけど、ドキッとすること平気で口にするな....思い出してしまうと...マズイ>




「ところで、さっきの話しだけど、香取さんの。」


「ん?あぁ、そうそう。」


「どういうこと?」


「あのね、最後の時間離れずにずっとしてた....でしょ...?」


「......(笑)、うん。」


「あの時、深澤くんの後ろに香取さんと思われる人の影というか魂みたいなのがいて.....」


「えっ?怖いんだけど....と、思われる人?」


「そうなの、だって顔見た事ない・・」


「あ、そうか。なんで、香取さん...?」


「中居さんの名前を口にして....」


「口にして?」


「私の中に入ろうとした。」


「ちょ、ちょっと!!どういう事?入ったの!!?」


「落ち着いて(笑)入ってない、入れる訳ないでしょ?私の方が霊格が高いし、それに.....」


「それに、何?!」


「深澤くんがはじいていた、その魂のかたまり(笑)」


「(笑)どういうこと?」


「交わっている最中って、私の体を深澤くんのオーラの色が包んでくれているの。旦那の時も、今までした人の時も一度もなくて、びっくりなんだけど」


「.......。何人の人と、あったの??」





若い子みたいなヤキモチだ。




「この年齢なんだから、それなりにあったよ。そこは流して(笑)深澤くんこそ、何人よ?」


「.......4人。蓮伽さん、5人目。」


「..........。」


「......何か言って(笑)」


「.....フツー(笑)」





「(笑)(笑)」

「(爆)」




「私ね、護られてるなーって思って抱かれてた。ものすごい快感もあって、心も満ちたんだよ。もう、深澤くんじゃなきゃ身も心もダメになっちゃっ....」





「んん......ッ、ぁ...」

(あぁ・・・・甘くて、優しくて、まとわりつくキス。何もかもをダメにするキスだな...)






「蓮伽さんのキスするときの顔はヤバい。」


「え?ブス?」


「(笑)(笑)逆。欲しそうなトローンとした顔をする。」


「だらしがないね、熟女は。」


「吸い寄せられる僕も、同罪です。」



「(笑)」

「(笑)」




「どちらにしても、妬みとか、恨みとか、そういうネガティブなものが凄く強く大きくなってる。中居さんには言えないけど、抑えきれなくなってる強さの正体は香取さんだと私は睨んでるの。異能のレベルがあったとしても、マイナスのパワーって根深くてしつこいから....抑えるのに大変。前回以上に鍛練を積まないとダメかも....。」


「.....そっか。力になれなくてゴメン。僕に出来る事.....」


「......ある。大事な事をお願いしたいの。」


「トゥスクルの歴史、特にダークな部分を調べて欲しいの。歴史を勉強しないで私はヒーリングしちゃってるから。」


「(笑)当事者だからですよ、生まれた時からその歴史の中に普通に存在してるから。仕方ないよね。」


「そうね、調べる必要がないものね。」


「そういうことです......」










声が小さくなったと同時に、フワフワな髪の毛が顔を覆いつくした。







(え?.....寝てる........(笑)キスかと思った(笑))







あれだけ、愛し合い果てたのだから無理はない。





(そりゃ、疲れるよね(笑))






到着までの間、私も目を閉じる事にした。

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