第74話 料理が得意な理由
深澤くんもシャワーから戻り、食事の時間になった。
テーブルに並ぶものはどれも美味しそうで、食いしん坊の私のお腹は鳴りっぱなしだ。
「蓮伽さん.....子どもみたい(笑)可愛いな」
「私は子どもおばさん?食いしん坊は治らないのよ(笑)」
「そんなことないよ、嬉しいんだから...さ、食べよ」
深澤くんの作ってくれたものは、手の込んだ和食だった。
少し気になっている。
男の子なので、作るとしてもざっくりしたものか、大雑把なものでもいいのに、料理人でも目指している人が作るようなクオリティだ。
「美味しい!」
「良かった!うまく出来て良かったよ!」
「ねえ、深澤くん。」
「ん?」
「こんな美味しい料理、いつ覚えたの??」
「.......子どもの頃。」
「すごくない?クオリティ高いんだけど。」
「ホント?良かった......あのね、お母さんが戻って来ると思ってたんだ。」
「お母さん.....。」
「僕が、何か出来たらさ、ご飯作るの上手く出来たらお母さんと一緒に暮らせるんじゃって、思ってたの、本気で(笑)」
「.....そうなんだ。お母さん、深澤くんが作ったもの食べてくれた?」
「ん、茶わん蒸しとオムライス。」
食卓には、茶わん蒸しがある。
「これ....?」
フタを開けるとダシの優しい香りが広がった。
具もキレイに盛り付けられていて見るからに美味しそうだ。
「ん....食べてみて」
一口、口に入れると、とても柔らかく優しい卵の味が喉を通る。
「お、美味しい!!!」
嬉しそうに食べているところを眺めている深澤くん。
「ところでさ、茶わん蒸しの食器って常備してあるもの??」
「いや、ない(笑)」
「じゃあ...これは(笑)」
「ん~、元々、夜ご飯は僕が作ろうと思っていて、あらかじめ準備をお願いしてあったんです。」
「深澤くん.....ステキ♡」
「ご飯くらいでそんなに喜びます??」
「毎日、どんな時も作ってるから、人が作ってくれるご飯嬉しいの☆」
「そっか....母親ってそういうものなんですね。」
「深澤くん....」
「一緒にいられるようになったら、深澤くんに美味しいって言ってもらえるようなものいっぱい作るからね!」
「蓮伽さん....ありがと。」
(ん..でも少し切なそうな感じ...気のせいかな)
「どうした?食べよ?」
「ゴメン、ちょっとセンチな感じになった(笑)」
「そっか、思い出の味だもんね」
「ビタースウィートな感じだけどね(笑)」
「それでも、お母さんの美味しい顔、大切な思い出だよ。」
「.....そうだね。」
「あ、でも!」
「??」
「これからは、深澤くんの作ったご飯を私がいっぱい何度も食べるから、お母さんの美味しい顔忘れちゃうかも(笑)困っ....」
深澤くんは急に席を立ち、私を後ろから優しく抱きしめた。
「困らない。蓮伽さんの美味しい顔で僕の思い出がいっぱいになるなら、いつもいつも僕がご飯作ります。」
「.......ありがと、嬉しいな~!これ以上太らないように気をつけないと」
「大丈夫、いっぱいいっぱい激しく愛しますから太る暇ないくらい(笑)」
「エーーーッ?!体力が、、、持たないデス。」
「持つ持つ(笑)こんなに蓄えているじゃないですか!」
「ひどッ!(笑)」
「これが、この体が愛おしいのです♡」
「お母さんの美味しい顔は、大切に心の奥にしまって☆寝かせたらスウィートになるから(笑)」
「そうですね、蓮伽さんの美味しい顔がこれからは増えていくんですもんね。」
「そうだよ、そうやって少しずつ二人の時間を重ねていこうね」
「......蓮伽さん.....」
この空気は......危険だ(笑)
「....ダーメッ!今日はもうおしまい(笑)色々とやらないと...ね!」
「そうでした(笑)そのためにもちゃんと食べましょ。」
この後も、深澤くんの美味しい料理を食べ優しい時間を過ごした。
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