第66話 トゥスクルとシャーマン~シャーマン~

迎えの車が来ると、乗って集合場所へ向かった。




既に中居さんは居て、出迎えてくれた。




「おはようございます、色々とありがとうございました!

とっても、有意義に過ごさせてもらいました!」



「おはようございます、ふふっ、とても素敵な時間を過ごされたようですね。

岩本さんの後ろに見える蓮の花・・・・満ち満ちていますので(笑)」


「あははっ(笑)....とても幸せな時間を過ごしました。

久しぶりです、あんなに愛に満ちた時間を過ごしたのは。」


「それは良かった、女性は愛されていると美しくなりますからね。

お天気が良かったのも幸いです。月がとても綺麗で、岩本さんの力に多大な影響をもたらしましたので。」


「自分でもわかります、体の中が満ち足りているのが。」


「深澤さんのおかげです、ね(笑)」


「.......なんか、恥ずかしいですけど。」


「(笑)とても羨ましいです。トゥスクルは逆なので....」


「・・・・逆?」


「はい、自分の能力を高めるには、愛し合うのはタブーとなっています。」


「......えっ...」

「そんな....」


「理由等は、そのうち機会があれば。」



そう言って、中居さんは力なく微笑んだ。




(中居さん......なんか訳ありだな。私に出来る事ないかな。)




「準備が整ったので、説明に入りたいと思います。

今回のミッションについてですが、

私の家系の力だけではどうにもならないほど、強大なパワーと対峙しなければなりません。

そして、トゥスクルでは解決できないものでもあります。」



「・・・・?どういうことですか?」



深澤くんが、耳元で囁く。

「........あのさ、思い出した。大学で研究した際に、文献にあった事と関係あるかも」


「深澤くん、もしかしてあなたは何か知ってる?」


「....一応、大学で研究していたテーマが”特殊能力について”だったので、、、

詳しくは分からないですが、さわり程度になってしまうかもですけど」


「それでも、話してみて。」


「あ、はい。陰陽って何事にもあると思うのですが、

シャーマンもトゥスクルもパワーの基本は”陽”なんです。

でも、異能の家系の中で特別に”陰”のパワーを取り込んで、

”陽”のパワーを強くする事が出来し者。が生まれる事があるようで。

ホントにまれなので、みんな調べたりせずに終わって、都市伝説レベルでした。

だけど.....」


チラリと私の顔を見て、深澤くんは微笑んだ。



「そうね、あなたの大事な人はその『陽のパワーを強くする事が出来る者』ね。」


「....はい。」


「しかも、岩本さんが覚醒したのは深澤さん、あなたのお陰なのよ。」


「・・・・え?」



驚いたように、私の顔を見た。



「岩本さん、言ってないの?!」


「言ってません(笑)だって、私はその力が欲しくて深澤くんと愛し合ったわけじゃないので。」




「え?え?愛しあうって何のことですか?」


「......えっ...。」



現場が混乱し始めた。



稲垣さんは目をまんまるくし、深澤くんは何か思慮している。



「稲垣、あなたについては私から説明します、深澤さんに関しては、、」


「私が」



・・・・・・・


「どういう事?」


「この間、言ってた・・ほら」


「.......あ、中居さんと何話してたの?ってやつ。」


「そうそう、あれ。」


「で?詳しく教えて。」


「ん、OK。

あのね、”陰”のパワーは何かわかるよね?」


「月、蓮伽さんが取り込むパワーだよね。」


「そう、でもそれだけじゃ足りないの。」


「足りない?」


「そう、深澤くんが恥ずかしくなるのはこれから(笑)」


「・・・・恥ずかしい....?」


「ふふっ、月のパワーに絶対的必要なものは、性のエネルギーで...」


「...?!」


「そう、もうわかったでしょ。女性がメスになる瞬間(笑)」


「(照)んー、わかった!恥ずかしいわ、確かに。」


「女性としての部分が満たされることによって開花するらしいの。

私はあなたに満たされて、花を咲かせた。

それは、私も中居さんから初めて聞いたんだけどね」


「ふふふっ....照れくさい。だから、蓮の花。」


「そう、みたい。」




稲垣さんに説明を終えて、二人が戻ってくる。



「(笑)深澤くん、理解したかしら?」


「.......ハイ(笑)恥ずかしかったです。」


「(笑)大丈夫、大人だから。」


「ですけど....なんで、言ってくれなかった...?」


「んー、深澤くんとそうなりたかったのは、そうしたのは、

このミッションがあるからではなかったから。

気持ちがあって、好きな人に抱かれたかったからだし。」



「蓮伽さんっ!」

みんなのいる前で、惜しげもなく抱きついて来た。





「愛しあうって、いいですね」

中居さんは、やっぱり寂しそうで含みがある。




「あの、シャーマンの家系の異能=蓮伽さんのことは理解しましたが、

トゥスクル・・・、中居さんの方はさっき逆って言ってましたけど...」




「それについては私が説明致します。」

稲垣さんが、神妙な面持ちで話し始めた。





「トゥスクルの家系で伝承のレベルが強いほど、男性との交わりで絶頂を迎え、体の中に相手を感じる事を禁じられているんです。」




「.......」

「・・・えっ?....なぜ?」




まれなものであれば、尚更、です。

かつて、トゥスクルも、性エネルギーを活発化させることによって

特別な力が強くなる、と信じられていましたが

月のパワーを受けられるのは、残念ながらヒーリングの特殊能力をもった家系のみのようです。」




中居さんが深澤くんに問いかける。

「深澤さん、特殊能力って日本にどれだけあるか知っていますか?」



「大きく言えば2つです。」




「そうですね、では細かいのを入れると」



「文献にも正確な数は残っていません。」

「そう..なの?」

「うん。」



「他に知っている事は?」



「はい、多分ですけど、北のトゥスクルと南のシャーマンが大元で、

この中に位や派生したものが含まれると、正確な数は把握できないと言われています。」



「深澤さん、知識が素晴らしいです。

まさか、私達の事を興味を持って研究している方に会えるとは...嬉しい誤算です。」





深澤くんはとても、嬉しそうだ。


ニマニマしながら淡々と続ける。



「シャーマンの家系の異能で最高峰は”ヒーリング”です。

担当というか、エレメンツが分かれていると思います、ね、蓮伽さん。」


「そうね、異能がいくつかあるんだけど、元になっているものが違うし

能力も同じくらいなので協力することはあっても争いは歴史上ないようよ。

”ヒーリング”は除いて、ね。」


「そうですね、”ヒーリング”の家系が一番上でシャーマンのすべてを統率している事になります。

なぜか?これは諸説あるみたいなのですが....蓮伽さんは知ってるんですか?」


「ん、知ってる。代々受け継がれている話の中にあるの。

”癒し”の元は、慈しみ=”慈愛”。悪を抑える事が出来る唯一のものとされている。

その、慈しみを受けたものは愛を受けるから...欲しがることはあっても、誰も超えようとしてこないの。

与える事が出来るのはうちの家系だけなので.....選ばれた家系であるようよ。

特に私は、ばあちゃまの直系なので(照)」



「.......蓮伽さん、すごいんですね...。感動です!」



「その人に、愛を注ぐことが出来るたった一人が、深澤くん、あなたなのよ。」




中居さんは、深澤くんに告げた。



「あのね・・・その.....」


「その..何ですか?」


「ええ、....ただ、交わるだけじゃなくて・・・」


「.......?なんですか(笑)たどたどしい」


「相性が大事で、気絶寸前の絶頂を迎えられないと.....」




さすがに、私たち二人は恥ずかしくなった。




「あ、の、わかりました(笑)」


「僕は嬉しいです、僕がその相手であったことが。

絶頂を味あわせてあげられた事もですが、僕も初めてのものすごい絶頂を味あわせて貰えたので♡」


「ちょっと、深澤くんっ!」


「あ、すいません、つい下ネタになってしまった。」





中居さんは、大笑いした。




「あはははははははっ!・・・・・あー、素敵!

よっぽど、お互いに良かったのね~(笑)」




「中居さんっ!」




「(笑)岩本さん、冗談よ。でもお陰で救えるものがいっぱいある。

二人の出会いは、今を生きる世界に大事な事なの。」




「良かった(笑)私達の、秘め事で救えるものがあるのなら」







「......特に、私達のこの場所、と私の血筋。」




中居さんと稲垣さんは、急に神妙な顔になった。

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