第58話 二人がここに呼ばれた意味




境内にひっそりと休けい処があったので、

腰を下ろしボヤーっと考えていた。






すると、フワッとした空気と共に

さっき見かけた男女二人が通った。




(とても、幸せそうだけどどうみても身分が違う感じだけど、私達、なのだろうか....

意識を集中したら、話せるのかな。)




中居さんによると、異能力が強大になると交信というか、

魂と意識を合わせ意志の疎通ができるような事を言っていた。

あまり興味がなかったので、頭の片隅で聞いていたが

出来るのだろうか・・・。




(気になる・・・色々聞きたい。)






中居さんに電話で確認する事にした。




————————・・・・・





『はい、中居です。あ、岩本さん、お疲れ様です。』


『お疲れ様です、岩本です。すみません、突然の電話・・』


『いえいえ、大丈夫だけど、どうしたかな?』


『この間、話していた”この世のものでないもの”と話す方法についてなんですが

もう一度、詳しく説明して貰えたらなと思って・・』


『いいですけど・・・今どこに?』


『境内にいます。』


『あ、そうなの、近くにいるのでそちらに行くわ』



中居さんに来てもらうことになった。





・・・・・・







『すいません、ご足労頂いて。』


『大丈夫だけど・・・深澤さんは...?』


『ちょっと、言い合いになって(笑)』


『言い合い?ケンカしたの?』


『えー....まぁ』


『明日、大丈夫...?多分、深澤くんの力が必要になるけど・・』


『大丈夫です(;^_^A』


『そう?ならいいのだけれど』


『スイマセン、ところでなんですが』


『あ、そうね、何?』


『あの辺、何か見えますか??』




中居さんは集中して、指さしたあたりを見ている。



『何か、いるのはわかっているのだけどおぼろげで・・

私は存在を感じる事は出来るけど、見えたり、交信は出来ないのよ。

岩本さんは?』



『私も、そのレベルだったのですが、修行をした後はスイッチを入れると

見れるようにまではなりました。

強めに意識を合わせてみたのですが、今ははっきりと交信はできなくて・・・』


『今は?って?』


『さっきは、言ってることがわかったのですが、今はそれがなかなかうまくいかなくて』



中居さんは思い当たる節があるようで、大笑いした。



『さっきと今の違いって何かしら??』



(・・・・・え?何?何だ?何だろう...)



『ふふっ、意外と鈍感(笑)』


『??』


『深澤くんが、いない。』


『?!確かに!でも、それ関係ありますか?』


『んー...正直その辺はわからないのだけど、

明日の仕事にも関係してくることだからな....

岩本さんの異能は月のパワーが源で、女性の満ち足りた、満たされた慈愛が主なの。

その能力が潤うには・・・』


『深澤くんが必要なんですね?』


『多分、ね(笑)』


『明日の仕事って、なんですか?』



中居さんは押し黙ってしまった。



『中居さん....?』




『うん・・・・・、簡単に言うと浄化。

実はね、この辺一帯に安らぎを求めてきているネガティブな魂たちが予想以上に

多くて.....結界を張っているのだけど、ものすごい量の様々な魂が集まって来ているの。』


『浄化!?そんな大それた事、私にできますか?無理ですよー!』


『聞いて、地球にはそれぞれスピリットの力が強い聖域があるのわかるわね?』


『はい、もちろんです。世界中にありますよね。』


『ここも、そうなの。通常であればスピリットの力が強いのだけど

最近、ネガティブな魂の方が多い時もあって....。

ここの環境が魂たちの望むものが多いのかもしれない。』


『そこで、私....』


『そうなの、予想していたより岩本さんのパワーが強くなっていて(笑)』


『え?笑うとこ?(笑)』


『ごめんなさい(笑)いや、きっと愛に満たされた時間を送ったんだなと。

想像してしまったら、ニヤニヤしてしまって...

それだけじゃない、予想以上のパワーがあなたに宿ってる。

二人が出会ったことは宿命であり、互いが運命の相手なのだと思う。』


(ん.....確かに、交わった時の感覚...今までの人にはない感覚ではあったけど)



『中居さん、あの辺にいる男女なんですけど・・・私と深澤くんの過去世の姿みたいなんですよ。

で、二人で居た時にお互い同時に見えて、声が聞こえて来たんですね。

私、話すことが出来るのかなと思って・・・』


『話すってことじゃなくて、通じる、的なじゃないかしら?

波長を合わせて、意志を汲み取るカンジ。』


『あ、なるほど。わかりました。ちょっと、やってみます。』


『あっ、岩本さん!』



中居さんが慌てて制止した。



『ねぇ....深澤くんがいないとダメなんじゃないのかしら・・・』




.........高度な事は、彼がいないと無理なのかな・・・



『・・・挑戦してみます。』




すぅーっと、息を吸って整え集中してみた。




・・・・・・




が、二人はこちらを見ただけで問いかける事はできなかった。




『深澤くん、必要みたいね。』


『(苦笑)の、ようですね......。』


『ケンカの理由はわからないし、どちらがどれだけ悪いかは二人にしかわからないのだけれど

.....私たちの年齢になるとあやまるって、気恥ずかしいのよね。

岩本さんにとってはこれも、試練の一つなのかも』


『.......そうですね。問題がありすぎて簡単には彼の腕の中には飛び込めないですけど

どれだけ我慢強く、どれだけの時間、腕を広げて待っていてくれるのでしょうか、ね。』


『(笑)確かな事は言えないけど、遊びで14歳も上の人を抱いたりしないし、

これだけ岩本さんの異能レベルが強くなっているってことが答えだと思うから。』


『....ありがとうございます、中居さん。』


『(笑)私は、帰りますね。仲直り、ぜひお願いしますね。明日、終わらないと帰れないので(笑)』


『わかりました(笑)!私はもう少ししたら戻ります。』




中居さんは微笑んで境内を後にした。




(私はどうするかな・・・・)




何気なくスマホを見ると、ものすごい勢いの着信履歴+メッセージが残っていた。




(20件!?・・・・と、メール・・・えぇ?!何これ(笑))



”今どこですか?”

”焼きそばのところに居ないんですけど”

”蓮伽さん、どこへいってしまったんですか!”

”宿にも戻ってない・・・”

”僕が悪かったです”

”ごめんなさい”

”お願いです連絡ください”

”どこにもいかないで...”

”僕が悪かったです、ごめんなさい!”

”お願い....戻ってきて”




すごい量のメッセージ。




.....素直って、いいな。





心に染みる。




でも....ふと思った。




(深澤くん、過去に何か辛い目にあったことが消化しきれていないのかな。

居なくなることに敏感すぎるし、感情の吹き出し方が極端。

トラウマがあるなら、解放しないと。....苦しそう・・)

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