第14話
緊張している私を見下ろす課長の端正な顔。
どんどん近づいてくると、唇が触れそうな距離で止まった。
目をギューっと瞑っている私の上で、課長がふっと笑う。
「この続きしたいか?」
「っ! そそそそそんなっ!」
「あっそ、したくないのか。残念」
そう言って立ち上がろうとする課長。
え?うそ…ちょっと待って!
思わず課長の腕を掴んでしまった。
「し、して欲しいです!」
「…っ」
驚いた顔の課長。
わ、私なななななんてことを!!
「冗談冗談! ウソです!!」
恥ずかしさで真っ赤になる私をよそに課長は顔を背けて肩を揺らし始めた。
「プッ、クックックッ! あははは!」
「…課長?」
「坂井、必死すぎ!」
「ちょっ…か、からかわないでくださいよ!」
だよね、こんな色気もない風邪っぴきの私を前にしても余裕たっぷりで、女のうちに入ってるわけない。
ムギュッと鼻を摘まれた。
「いだだだだ! なにするんですか!?」
「風邪が治ったら思う存分可愛がってやるよ」
「はい?!」
「そんな潤んだ目で胸元さらけ出して言われたら、理性で無理やり抑えてるの吹っ飛ぶけどいいの?」
胸元を見ると、いつのまにか熱の暑さでパジャマのボタンを外しているのに気がついた。
「!!」
「ほらっ、分かったらさっさと寝る!」
またクシャクシャと頭を撫で回すと、布団をバッサリと被らされてしまった。
な、何やってんの私!
ひと通り片付けを済ませて薬を飲ませてくれると、課長は土日も念のためゆっくりするようにと言って、すんなり帰って行ってしまった。
「はぁ…」
き、緊張した……。
いくら風邪でダウンしてたって、いや、してたからこそ、女の一人暮らしの部屋に男の人が入ってくるなんて緊張しないわけがない。
ましてそれが課長なら、なおさら。
『風邪が治ったら、思う存分可愛がってやるよ』
『理性で無理やり抑えてるの吹っ飛ぶけどいいの?』
うあーー!
思い出してまた顔が赤くなってしまった。
どういう意味!?
課長が私に対して理性で抑えるなんて…ウソだよね。
またイジワル言って、仕事押し付けようとしてるんだよきっと。
私も…あんなこと言うなんて…絶対、熱のせいだ。
もう少し寝よう。
寝てスッキリしたら、この熱も治るかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます