*3*

第9話

目を覚ますと、部屋の中も外も随分暗い。



「もう夜になってたんだ」



心なしか気分も良くなってる気がする。


一日寝てれば治るような風邪だったんだ。

よかった。




部屋の電気をつけて時計を見ると、7時を過ぎている。



気分は良くなったものの、やっぱりまだフラフラする。



課長からもらったイオン水でも飲もうと立ち上がったとき




ピンポーンピンポンピンポンピンポーン!




何度も玄関のチャイムが鳴った。



パジャマに髪の毛ボサボサのスッピンだけど、着替える気力もないし宅急便くらいならこのまま出ても大丈夫か。



フラつく足でドアを開けるとそこには課長が立っていた。




「坂井、大丈夫か!?」




課長の綺麗な顔が必死の形相になっている。




「え? あ、はい…寝たらだいぶ良くなりましたから」



「今朝も連絡無かったから心配したんだぞ」



「は? 朝、連絡しましたよ」



「昨日な」



「はい!? 昨日?」



「悪いけど、勝手に上がるぞ」



「あ、ちょっ!」



そう言うと、部屋に入ってくるなり荷物を置いてワイシャツの腕を捲り上げた。



「なんも食ってないだろ。作るから待ってろ」



「いや、でも課長」



「おまえ、ずっと寝込んでてどーせ何も食べてないんだろ。顔が真っ青だぞ」




そういえばお腹空いたようにも感じるけど、時間の感覚が掴めなくてお腹空いたのかも分からない。



「とりあえず寝てろ。出来たら持っていってやるよ。台所も勝手に使わせてもらうからな」



「す、すみません…」



拒否する気力もなく、ベットで横になってキッチンに立つ課長の後ろ姿を眺めていた。

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