第4話
完全にノーマークだった。
カウンターということを忘れて周りが見えてなかったのもあるけど、昭和の雰囲気漂うこのお店が課長の行きつけの居酒屋とは露ほども知らず、後ろにいる人間の悪口を思いっきり言ってしまっていた。
なんてタイミングの悪さだろう…。
壁に耳あり障子に目あり、自業自得、因果応報。
この言葉を実感したことが果たして今までどれくらいあっただろう?
記憶する限りでは生まれて初めて。
分かってる、分かってるよ。
公共の場で人の悪口言っちゃいけないことくらい。
だけど、せめて、ご本人登場だけはしてほしくなかったー!
あれから聡美は課が違うし、アニオタ課長がその場にいなかったから良かったけれど、当分私のフロアには来てくれなかったな…。
おかげでうちの課長は何かあると私に仕事を振ってくるせいで毎日残業の日々。
おまけにミスを見つけてはご自慢の愛想笑いで「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」と罵られる始末。
みんなの前ではあくまで優しくニッコリと。
でも仕方ない。私も反省して、しばらくは社畜となり且つ断酒しましたとも。
あの一件から、私の課長に対する態度は子犬のようにビクビク怯えたものになってしまったし。
だからあからさまに近づかれるとどうしても避けてしまう。
そして優しい態度に裏があるんじゃないかと引いてしまう私がいたりする。
はぁ〜とため息をつきながら鏡を覗き込んで自分の顔にギョッとした。
ほんの少しお酒を飲んだだけでこんなになる?ってくらい紅くなっている。
これも断酒の影響?
すっかり酔いが回った顔して、これじゃあ課長も心ならずも心配するわけだ。
いや、だからといって心配されるほうが心配だし、さっさと席を移動しよう。
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