第2話

端正な顔をした美形で長身、なおかつ仕事も出来て気が利いて優しくて、そのうえ若くて独身。



モテる噂は数あれど女性の影を見たことがない、品行方正なデキるイケメンさん。




でも、そんな課長の本性が「俺様」だということをなぜか私は知っている。




だから社内でいつも猫を被って爽やかに対応している課長を見ると、裏表のギャップに騙されてはいけないと思っているのは、私だけじゃないだろうか。




もちろんそんなことを知る由もない女子達は、表の顔の課長を紳士だと言って慕って近づこうとしている。



ほら、今だって課長を狙う人が睨みをきかせて私の席を今か今かと狙ってるっていうのに。




そもそも私は、座席奥に座る課長を避けて真逆の出入り口側の席に座っていたのに、知らないうちに私の隣に座っていて驚いていたんだから。



「失礼します」



私はそそくさと個室を出ると廊下の御手洗いマークの方向へ歩いた。



戻ったら違う席に移動しよう…絶対!




私は直属の上司である課長を避けている。

避けているのを知ってて近づいてくるんだからタチが悪い。



まぁ、避けるといっても上司だから事あるごとに声をかけてくるし、仕事だってもちろん一緒に行う。



ただひとつ他の社員と違うのは、妖艶な眼差しと色気漂う口元で私のことを 「社畜の坂井」 と呼ぶ。



私だって好きで社畜と呼ばれている訳ではない。



そもそもの原因は課長にある。

いや、その元になったのは私だけど…。

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