第100話
無理もないか。
小さくなっている相手の背中を眺めながら、胸中で言葉を吐く。
一心同体。二人で一つ。彼等はずっと互いのみを信用し、そして互いのみに頼って生きてきた。
私は双子ではないから気持ちは分からない。分からないけれど、綴の哀しみは痛い程に伝わる。
「語が目覚めるまで、待って頂けますか?」
「すみません夜永様。すぐに本家へ連れ帰れとの事でしたので、それは難しいかと思います。」
「そうですか。」
「それから、御二人は大学に出席するようにと不動様は仰っていました。昨日も、欠席されたのですよね?」
「…はい。」
「語様には私と不動家の執事が付きっ切りで看病致します。御二人は大学で勉学に励まれて下さい。」
返す言葉なんて、もうなかった。
無理のある情事の疲れで学校をずる休みし、その情事が原因で語は久し振りに喘息の発作を起こした。熱だって全然引いていない。
誰がどう見ても、私達の自業自得なのだ。
自己管理と自己責任ができていなかったと云う、不甲斐ない理由なのだ。
その自覚があるからこそ、綴は何も発さないのだろう。
結局、語が意識を取り戻す前に不動家の使用人によって語はマンションから出て行ってしまった。
「それでは失礼致します。」
「ありがとうございました。」
「夜永様。」
「はい。」
「綴様が憔悴しておられていたので発言は避けたのですが…もし大学をこのまま勝手に欠席するのが続くならば、綴様と語様はバラバラにする。不動様はそう云って憤慨しておられました。」
「……。」
「綴様と語様が引き裂かれても、夜永様は引き裂く事ができません。」
靴を履いて玄関扉を開け放った医師が、見送りに出て来た私へと振り返って苦笑を浮かべた。
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