第30話

彼等のお遊戯相手になって十五年。


環境も住まいも変わったと云うのに、彼等の狂気は変わる所か過激さを増す一方だ。




「ほら、よく噛んでね。」



子供じゃないのに、もう十八歳なのに、食事の補助をされているなんて滑稽過ぎる。


突き刺さる彼等の視線が痛くて苦しい。



ピザ食べたかったな。お父さんとお母さんと三人でピザを食べた二歳の誕生日が懐かしいな。





「ごっくんして?」


「………。」


「美味しい?」


「………。」



私の全てがこの双子に支配されている。


決定権もないし、束の間の自由さえ許されていない。



両頬を掴まれ、強制的に顔を上げさせられた。




「美味しい?って、僕は訊いているんだよ夜ちゃん。」



自らの額に相手の額が擦り付けられる。こんなに至近距離でも尚美しい相手の貌に憎しみが沸き上がる。




「………美味しい。」


「ふふっ、それなら良かった。」



何が良いのだろう。


何も良くない。寧ろ悪い事だらけだ。



人生は狂った。この双子の愛玩動物に選ばれてしまったせいで、私の日常は窮屈で堪らない。




「綴、明日は僕が夜に食べさせるの。」


「はいはい、分かってるよ。」



不動家お抱えのシェフが作った美味しいはずの食事は、今日も変わる事なく屈辱的な味がした。

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