第24話

綴の唇が、私の唇を塞いだ。


相手の唾液と熱をはらんだ舌が、唇を割って口腔内を犯す。



「んっ……。」


「今までもそうだったけれど、大学で僕達以外と仲良くしたりなんてしたら許さないよ。」



唇を放し、ニヒルに笑んだ綴が断りもなく私の口内に指を突っ込み人差し指と親指で私の舌を挟んだ。



「もし破ったら、夜ちゃんの舌切って殺すからね。」



猟奇的な発言をさらりと披露した相手に、されるがままで頷いた。


この男なら本息で私を殺めるだろう。残虐性が高い行為をいとも容易にしてのける様な人間だって事は、共に生活してきた経験から学習している。




「舌がなくなったら夜とフレンチキスができないの。それは厭だなぁ。」



綺麗な貌を崩して拗ねている語だけれど、漏らしている言葉は綴に引けを取らない狂いぶり。




「あ、でも心配しないで。例え舌がなくなってもね、僕は夜を愛してるの。」



純粋無垢に綻んでいる貌が、眩しい。


今の言葉をどう受け取れば心配しないで済むのか教えて欲しい。



ほんの少し眉間に力が入ったけれど、綴の指ごと私の舌を舐めた語は酷く満足した様子で開口した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る