第17話
だから私には大学に通って死ぬ気で勉強する理由が大いにある。
何時、どの瞬間に首を切られても良い様に、生きる術をできるだけ多く取得しておかなければならないのだ。
大学卒業と云う肩書は、そんな私にとって酷く魅力的な言葉なのだ。
「夜ちゃん、分かっているの?夜ちゃんの帰るお家は、此処しかないんだよ?」
綴の放った言葉に隠された真意は、「だから僕の機嫌を損なわせないでよ」と云ったところだと思う。
分かってるよ。
わざわざ言葉で紡いで貰わなくても、自分の惨めな立場くらい私が一番よく分かっている。
脅迫めいた言葉を吐く癖に、私の顎を掴んで持ち上げる綴の表情は嬉々としている。
本当に、屈折した最低な性格をしている男だ。
反抗の言葉を呑み込んで、その替わりに奥歯を強く噛んだ。そうでもしないと、本音が零れ落ちてしまいそうだから。
「夜の家族は、僕と綴だけなの。」
二人のお遊戯相手になった時から、変わる事のない口癖を落とした語が私の唇を指先でなぞる。
「そうだよ、夜ちゃんの家族は僕達だけなの。」
続けて綴も、呪縛の言葉を私に唱える。
妖艶な彼等を双眸で捉えながら、私は胸中で呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます