遠出

第25話

「…!うわぁ~!!綺麗な海だぁ♪!!」

『な♪良いところだろ?』


「うん!すごい嬉しいーー!!」

『良かったぁ~!喜んでくれて♪』


今の季節は、夏の終わり

…私の、最後の夏。


頼とこうして、海に来れるなんて

とっても!嬉しかった♪

私の、大切な想い出が一つ増えた。


「キャー!もぉ~♡頼ったら~!!」

『アハハ!ほらー!彗逃げないと濡れるぞ』

波打ち際で、はしゃいだ♪



「あ~!楽しかった♪頼、ありがとうね♡」

『いえいえ、あ!…そうだ!!』


浜辺の、流木に座ると

頼は、バックの中から…

『はい!コレ!!』

小さな木箱を私に差し出した。


『彗、開けてみて?』

私は、その小さな木箱を…そっと開けた



♪~♪♪~♪♪♪~♪~♪♪~


それは…オルゴールだった

音色は、とても優しく愛に溢れていた。


そのメロディーを、私は知っていた

"J.S.バッハ メヌエット ト長調"


…確か、バッハが奥さんの為に

作曲したと言われている曲だ。


「ありがとう、頼。

私、この曲すごく好きだったから嬉しい♡」


頼は、優しく私の肩を抱いた

夕陽に輝く海を、ただ静かに眺めていた。



……この頃、私は少しだけ、

余命が僅かである…きざしを感じ始めていた

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