第5話

祖父は眼鏡をかけていた。


年齢的に老眼だったからなのか…

元々、視力が弱かったのかは

…はっきりわからないのだが


眼鏡に不具合があると、

休みの日に、街にある眼鏡屋へと

バスで出掛けていた。


私は、その出掛ける時の

祖父のファッションセンスが

とても好きだった。


ツイードの背広せびろを着こなし、黒い足袋を履き

足元は…「下駄げた」を履いていた!


どこか、"和モダン"な感じで

凄く似合っていたのを憶えている。


下駄は、いくつか持っていて

こだわりがあった祖父だが、

出掛ける時は、いつも一番お気に入りの

四角い、ちょっと大きめの下駄だった。


…カラン。コロン。カラン。コロン。


今でも、時折。

祖父の下駄の音が聞こえたら…いいのにな。

と思う事がある。

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