第66話

二人の事。



率直に言って、私は彼等の事を何も知らない。




「えっと、気さくで優しいって事くらいしか……。」




まさか質問されるとは思ってなくて、しどろもどろになりながら答えを出せば、今度は千智君の目が見開いた。



あれ?何か気に障るような事言っちゃったかな。



本音を言ってしまったばかりに今更言い直すのも気が引けて、視線を泳がせれば、視界の端で一瞬吃驚した様子を見せた夜紘君が映った。





「あはははは、ヒマちゃん本当に面白いね。変わってるよ。」




沈黙を先に破ったのは千智君の笑い声だった。





「変わってる?」


「あ、勿論良い意味でだよ。」




そう言われても、私にはどういう意味かさっぱり分からないから情けなくなる。



ひー君ならきっとすぐに分かるんだろうなぁ。


だって、ひー君は何も言わなくてもいつも私が考えている事が全てお見通しで、すぐに理解してくれるもん。






「気さくっていうのは俺の事でしょう?夜紘はどう見ても気さくじゃないもんね、一見ただの鬼だし。」


「おい。」




可笑しそうに笑い続けている千智君を睨みつける夜紘君は、少し不満げな様子だ。





「でもねヒマちゃん、夜紘はともかく、俺も実は気さくな人間なんかじゃないんだよ。」


「そうなの?」


「うん。それにね一番大事なのは俺達は絶対に優しい人間なんかじゃないって事だよ。」


「……え?」





言っている言葉とは裏腹に、千智君は柔らかく目を細めた。

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