第48話

青々とした葉を着けて揺れる木々。


木漏れ日が窓から射しこんで、吹き抜ける風は暑くもなく寒くもなく、心地が良い。



淡いピンクの花を見事に咲かせていた桜も気づけば散っていて、慣れるのに必死だった高校生活もやっと日常へと変わってきた。



カレンダーを見ればあっという間に5月を迎えていて、ママが「高校生はあっという間なのよ。」と言っていた事を思い出して、あながち嘘じゃないかもしれないと思った。




入学してから一ヵ月。


変わった事と、変わっていない事がある。






「日鞠ちゃん、おはよう。」


「彩愛ちゃん、おはよう!」





まず変わった事。


普通にお話しできる人ができた事。




ひー君と別れて席に着いた私に駆け寄って来た彩愛ちゃんは、いつもニコニコしていて本当に可愛い。


あの英語の授業をきっかけに、彩愛ちゃんは私によく声を掛けてくれるようになった。



まだ友達と言って良いのかは分からないけれど、彩愛ちゃんと是非そういう関係になれたらなと密かに思っているのは誰にも内緒。



勿論、ひー君にも絶対に秘密にしなくちゃいけない。





「日鞠ちゃんに会いたかったよー。」


「ふふっ、嬉しい。私も彩愛ちゃんに会うの楽しみだったよ。」




ゴールデンウィーク明けだからか、教室の雰囲気が全体的に気怠そうだけれど、彩愛ちゃんは今日も元気だ。



ひー君とクラスが離れて憂鬱だったけれど、彩愛ちゃんのおかげで近頃は楽しく過ごせるようになっていた。

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