猛毒狂詩曲

第46話

前にひー君は、友達なんて必要ないと言っていた。

私にはひー君がいて。

ひー君には私がいて。

それで十分だって。

だけど、だけどねひー君。

私、やっぱりお友達が欲しいの。

同い年の、同性の子と仲良くなってみたいの。

「誰でも…ないよ……。」

どうにか絞り出した私の言葉に、ひー君は手の力を一気に緩めた。

不安になったり寂しくなったりするとひー君はこうして私の首を絞める癖がある。

苦しいけど、すっごく苦しいけど。

ひー君の方が苦しそうな顔をするから、止めてって言う事ができない。

それに、ひー君を不安にさせたり寂しい思いをさせたりする私が悪い。

だって、ひー君は本当はとても優しい人だから。

「本当に？」

まだ疑いを持っているひー君の瞳から目を逸らしながら、私はゆっくり首を縦に振った。

「うん…クラスの子が噂しているのを…偶然聞いただけだよ…誰からも聞いたりなんてしてない。」

「嗚呼、何だ。そっか。」

安堵の息を漏らして、私の身体を抱き寄せたひー君は若干痛みの残る首筋にキスを落とした。

「ごめんね、痛かった？」

「ううん、大丈夫だよ。」

「日鞠が僕以外の人と関わったのかと思ったら、不安で怖くて仕方なかった。」

「ひー君…。」

ちゅっ、ちゅっとひー君が首筋に唇を寄せる度に、リップ音が教室に響く。

「日鞠には僕だけだよね。僕以外と関わったら駄目だよ？」

真っ直ぐに私を見て頬を緩める彼に、罪悪感で胸がいっぱいになる。

それでも、私の中で彩愛ちゃんと仲良くなりたい気持ちが強かった。