第16話

楽しかった夕食が終わり、ひー君とひー君ママが帰った後の我が家は酷く寂しく感じてしまう。




「ご飯美味しかったよ。」


「頑張って作った甲斐があったわ。日鞠や氷雨君がもう高校生なんてね、まだ実感が湧かないわ。」


「…うん。」


「あら、緊張してるの?」


「ママ、私高校では友達できるかな?」


「勿論よ。日鞠は良い子だもの、きっとできるに決まってる。氷雨君だって一緒だし安心よ。ね?」


「そうだね。」




ひー君が高校でも一緒にいてくれる。


それは本当に強い心の支えだ。




だけど、それでも完全に不安は拭えない。


私は、ひー君以外に友達がいない。


正確には友達ができないのだ。




自分から話し掛けたり、積極的に輪の中に入ったりもしたけれど、皆最初は笑顔で迎え入れてくれたのに、途中からぱたりと視線すら合わせてくれなくなってしまう。



それが何度も何度も、毎年のように繰り返されてしまうから、いつしか友達を作る事を諦めてしまっていた。



私の性格が駄目なのかな。


嫌われるような事したかな。



色々思考を巡らせてみても、答えに辿り着く事はできなかった。




「日鞠には僕がいるよ。」




人間関係で肩を落として涙を落とす度に、ひー君は私を抱き締めて涙を拭ってくれていた。




「僕だけがいれば良いの。だって日鞠には僕以外必要ないでしょう?」




ひー君だけは、私の傍にいてくれた。


友達がいなくても寂しいと思わずに済んだのは、きっとひー君が片時も離れずにいてくれたおかげだ。

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