第7話

こういう時、ひー君から目を逸らせない。


上手く説明ができないけれど、逸らしてはいけないと、身体が覚えている。




「僕だけの可愛い可愛い日鞠。」




依然、憤りを瞳に宿らせる彼に組み敷かれた私を支配するのは、恐怖でも歓喜でもない。


強いて言うなら、服従心に近い物。




「好きだよ、日鞠。」




私の世界はひー君だけ。



ひー君は、生まれた時から変わらず、ずっとっずっと私の傍にいてくれるの。



醜くて、ドジで、何の取り柄もない私なんかを見放さずに隣についててくれる。





「うっ……。」



首筋を這っていた冷たいひー君の手が、唐突に私の首を締め付ける。



酸素を奪われ、苦痛に歪む私の顔を満足そうにひー君は見つめている。




締め付けは窮屈になる一方で、徐々に意識までもが遠のいてくる。




本能がこの苦しみから解かれたいと切望する時、甘美な声が降りかかる。




「日鞠、愛してるよ。」


「…ひー君……。」


「日鞠は僕の事愛してる?」




無邪気に首を傾げて笑うひー君は、どんな表情をしていてもとても綺麗だ。




「愛してるは?」



朦朧とする意識の中、私は必死に首を縦に振った。




「愛…してるよ。」



嫌いなわけがない。


だって、私にはひー君だけだから。

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